德永　将生代表

当店では、定番の食パンやフランスパン（パン・ド・ロデヴ）のほか、デニッシュやスコーン、季節の食材を使った惣菜パンやスイーツパンまで幅広くいろんなパンを揃えています。母はとても料理上手で、私はそんな母の手料理で育ちました。母とともに作るパンは、食べた人をほっとさせるような馴染みある味わいで、とても美味しいと思っています。お客さんに提供したいのは、特別な食材を使ったものとか既製品のようなパンではなく、生活の中に自然に溶け込むようなパンです。例えばその食材から季節を感じたり、食材同士の組み合わせから生まれる味わいだったり。ふと思い出して食べたくなる、そんな日常の生活に寄り添うパンを手作りしています。
当店の看板商品は、デンマークの主食であるライ麦パン「ロブロ」です。ロブロはライ麦を100％使用するのが一般的で、小麦で作るパンと比べてどっしりしてマイルドな酸味があるのが特徴です。当店のロブロは青木村オリジナルブランド蕎麦「タチアカネ」のソバの実を炊いたものと胡桃を練りこんで作ります。ソバの実自体はあまり味に主張はないのですが、ライ麦の風味を際立たせています。また、ソバの実の粒々した触感が楽しく、ライ麦パン特有の粘性あるどっしりした感じを和らげています。ライ麦、ソバの実、胡桃の触感がまるで雑穀ご飯を食べているようで、噛めば噛むほど味わいが広がります。ハムやバター以外にも、野菜やお魚のマリネなどとも相性抜群です。

両親が横浜で開業したベーカリー「ベッカライ徳多朗」でパン作りを学び、私の独立と家族の移住とを併せてここ青木村に来ました。長野は旬の野菜や果物が豊富でとても美味しく、都心部では手に入りづらい食材が新鮮な状態で手に入ります。また、ここ青木村は来て１年経たないですが、季節によって移り変わる風景が１日１日美しく、季節の中で生きているという実感を得ます。
長野の食材を活かしたパン作りができることは幸せで、お客さんにその季節がきたら思い出して食べたいと思ってもらえるような、そんなパンを作り続けたいと思っています。

当店は、平日は早朝とお昼前の2回に営業時間を分けて営業しています。2回に分けることで焼きたてのパンをご提供できますし、お客さんがどの時間に来たら焼きたてがあるのか分かりやすくなったとご好評いただいています。土日は朝だけの営業（7:00~10:00）になっておりますが、県内のお客さんが多い中、県外の方や横浜のお店の常連さんが都内から食べに来ていただいたこともあります。
また、なるべく焼きたてを召し上がってもらいたいので、イートインスペースも用意しています。焼きたてのクロワッサンなどは、購入後の包装した袋の中で蒸れてしまうので、焼きたてとお持ち帰り後では食感が変化します。もちろんどちらも美味しいですし食べ方は自由ですが、ぜひ焼きたてもお召し上がり頂けたらと思います。イートインスペースでは、初めてお会いするお客さん同士がお話する姿を見ることもあって、うれしい気持ちになります。これからも地域の方やパンを買いに来てくださるみなさんの交流やつながりが生まれる場所にしていきたいです。

父と母は、パンを買いに来てくださったお客さんと会話することを大切にしています。お客さんと近い距離でいたいと話をしていて、パンの特徴やおすすめの美味しい食べ方を伝えています。私もパンをただ作るだけとか売るだけという風に分けないでいることを意識しています。自己満足のパンで終わるのではなく、パンの特性や歴史、食べ方や保存方法など、これからも多くを勉強してお客さんに美味しく食べてもらいたいです。