当たり前にあったこの場所を引き継ぐ
大学生の頃は英語を専攻していてアメリカへ語学留学した時、自分のことを説明する際に実家が酒蔵ということを地元の外国人の方にアピールすると、すごく興味を持ってくれていろいろ質問をされたのですが、その時は全然興味がなかったのであまり答えることが出来ず、恥ずかしい思いをしました。でも、両親のやっている仕事は、日本の文化となる仕事なんだと感じ、素敵なことだとそこで認識ました。
それでも卒業後は東京で婦人服メーカーに就職しましたし、杜氏になることも家業を継ぐことも考えていなかったので、恥ずかしい話、蔵がこんなに近くにあるのにお酒を造っているところさえ見たことはなかったですね。
しかし、両親が自分たちの代で酒蔵を辞めようと考えていると聞き、120年超続いてきたこの事業が終わってしまうのがもったいないと思ったことと、当たり前のようにあったこの場所がなくなるのが怖くなり、地元へ戻ってきました。
お酒を造りたい、お酒を売りたいという感覚で戻ってきたのではなく、この場所を自分たちの代でなくすのは嫌だという感覚でしたね。
杜氏への道
酒屋なのにお酒の造り方を知らないというのは、仕事をしていく上で恥ずかしいことなので、まず勉強をしたいと思い、長野県で8回連続金賞を受賞している名杜氏の方にどうしても教わりたく、修行させていただきました。
最初は仕事の半分以上が洗い物という日々が続きましたが、段々さまざまな作業に誘ってくれることが多くなりました。一緒にいる時間が長くなってくると距離も近くなり、やっといろいろと教わることができると思ったとき、その杜氏の方が急遽亡くなってしまったんです。倒れている場所が酒造りで一番大切な場所「麹の室」で、最初に発見したのが私だったので、そこから酒造りをやっていかなければいけない、杜氏の思いを残していきたい、そう思ったんです。
それからも引き続き何年か修行をさせていただき、実際に自分の酒蔵に戻って酒造りをしましたが、場所が違えば味も違くなる、思うようにならなくて難しい、でも造るのは楽しいと思えたのと、酒造りをまた復活させることが出来たのは嬉しいですね。
長野県産の食材を生かして
日本酒もジュースも長野県産のお米、野菜やくだものを使って造っています。日本酒の代表となる「月吉野」はお花見酒として飲んでいただくことが由来となっています。お花見の時だけではなく、食事に添えることによってその場が楽しくなるお酒、人の幸せの空間にあるようなお酒にしたいと思って造っています。また、当社の甘酒はお酒と同じお米を使っていることと、ラブレ菌という乳酸菌を添加して乳酸発酵したものになっていて、珍しいものとなっています。さまざまな味を用意していますので、甘酒が苦手な方やお酒が苦手な方にも楽しんでいただければと思っています。
この場所を伝えられるように
まずは技術をもっと高めていきたいと思っています。再現性のある毎年同じレベルのお酒を造れるようになりたいですね。
また、ずっとこの場所で酒屋をしていますが、地元の方にあまり知られていないと感じたので、もっと地元の人に知ってもらえるような会社になりたいです。そして、最初のきっかけでもあった海外への輸出をしていきたいです。少子高齢化で国内ではお酒の消費が減っていくことが懸念されています。国内が一番大切ですが、海外の方にも販路をつくっていきたいと思っています。
さらには、私たちを知ってもらうことにより、塩田平やその先の別所温泉、もっと広く言うと上田市、この地域のことを知ってもらえるような会社になればいいですね。一番の理想は、当社のお酒を飲んでいただいた後、蔵元を見に行きたいと思ってもらい、来店してもらったついでに別所温泉でゆっくりしてもらい、この土地や場所、田んぼなどの風景、2両しかないローカル電車など、丸ごと知ってもらうことですね。
会社名 | 若林醸造株式会社 |
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所在地 | 〒386-1325 長野県上田市中野466 TEL:0268-38-2526 FAX:0268-38-0225 HP:http://wakasake.wix.com/wakasake/ |
杜氏 | 若林 真実 |
事業内容 | 清酒・清涼飲料水等の製造、販売 |
店舗外観 |