考古学への想い、実家のスーパーから事業転換
(株)アルカの事業は、前社長の角張淳一氏(現社長の夫)が後継した実家のスーパー「ツルヤメイトやまいちや」の一部門として始まる。角張淳一氏は大学で考古学を専攻。卒業後は実家のスーパーを後継するも、考古学への想いを諦めきれず、働きながら大学院へ通い、スーパーから考古遺物の図化分析に大きく事業転換を行った。前社長の考古学の知識や高い分析能力によってもたらされた考古遺物の作画や整理・分析の精度は、業界内に定評があり、非常に高い知名度を持つ。
“アルカ“の名前の由来は、考古学の英名archeology(アーケオロジー)に由来する。発掘業務を行う会社は多く存在するが、当社のように遺物の図面とその整理・分析に特化している専門企業は少ない。社名のとおり考古学一筋の当社の本棚には、全国の遺跡に関する書籍や文献が所狭しと並んでいた。
精緻な観察と丁寧な図化 考古学の基礎を支える緻密な作業
会社2階の作業スペースを覗くと、しんとした空気の中で遺物に真剣な眼差しを向けるスタッフの姿が目に入る。女性が多い理由は、大小様々な遺物を細やかに図化するには精緻な観察と緻密な作業が必要だからだと社長は話す。小さな石器などは数時間の作業で完了するが、大型で縄文様を有する土器などは、1日以上の作業になることも。
作業画面に映る石器は、実物の細部まで緻密である。土器の縄文様は、編み目の微妙な違いまで正確に写し取られている。土器の編文様から、実際の編み方で編まれた縄を復元することもできるという。それだけ正確に観察されて図化された土器の図面からは、当時土器を作っていた製作風景まで感じることができる。
図面は写真だけでなく実測図に拘る。図化は地道で根気のいる仕事だが、考古学の基礎を守り下支えしていく気概でみんな取り組んでくれていると社長は話す。スタッフの方々は集中した面持ちで遺物に直接触れ、細やかに観察を続ける。表面の質感や起伏を線描するだけでなく、出土した地域の特性や特徴を織り交ぜて考察を行う姿は、まるで遺物と静かに対話をしているようにも見える。
前代表の急逝 アルカ通信がつなぐ考古学の世界
「前社長は娘の誕生日は忘れるのに、この石器はいつどこで第何層から発掘されたのかは覚えているんですよ」と、社長は少し困ったような、懐かしいような表情で前社長の遺影を見つめる。考古学に没頭し、業界でも高い知名度をもつ前社長が52歳という若さでこの世を去ってしまう。それと同時に(株)アルカは窮地に立たされる。
「前社長の死後、半年間は発注が来なくなってしまった。前社長が亡くなって会社は畳まれたと思われていたらしい」と社長は話す。高い専門性と知名度をもつ前社長の存在はそれほどまでに大きく、業界に衝撃を与えた。
前社長を失ってしまったが、(株)アルカには残された財産がある。考古学の世界との繋がりとなる広報誌“アルカ通信”である。2000年10月5日のいわゆる“旧石器捏造事件”によって元気を失くした日本の考古学界を元気づけたいと前社長が始めた。遺跡から分かったことを気軽に発信できる場として、日本国内だけでなく世界で活躍する著名な考古学者のコラムが掲載されている。考古学界を元気にしたいという前社長の願いから始まったアルカ通信は、前社長亡き今も考古学界の灯となって生き続けている。
受け継がれる社長の想い 「納品は最大の営業である」
社長が大切にしていることは「納品は最大の営業である」という前社長の言葉である。(株)アルカは営業担当者をあえて持たず、高い技術力と品質で発注先の定評を得ている。また、勉強してきた考古学の知識を生かし、図化分析によって気づいたことや分かったことを伝えることで、図面以上の情報を提供する。こうした技術力や+αの情報によって会社の名前を覚えてもらい続けること、これからも続いていく会社にしたいというのが願いであると、社長は話す。前社長の想いは受け継がれ、いつしか前社長の夢が社長の夢になっていた。
店舗名 | 株式会社アルカ |
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所在地 | 〒384-0801 長野県小諸市甲49-15 |
HP | http://www.aruka.co.jp/ |
事業内容 | 遺跡で発掘された遺物の整理・図面作成・報告書作成補助 |
店舗外観 | |
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