作品に表れている人間性に憧れて
漠然と刀には興味がありましたが高校生の時に博物館で鎌倉時代の名刀を見た感動が、刀鍛冶になったきっかけです。彫刻でも絵画でも何でも、作った人の人間性、精神みたいなものが作品に表れていると思います。博物館でその刀を見たときに、作品から読みとれる雰囲気を感じて、自分もそういうものを作れる人間になりたいと思って、刀鍛冶になろうと思いました。
優れた芸術性が感じられるものにも色々と種類がありますが、作者が意図して作ったものでありつつ、それが作者の意図と感じられず、自然な魅力として感じられような作品を作れる人間になりたいですね。
極端な話をすると、職業を選んだのではなく、生き方そのものを選んだというような感じです。
繊細な感覚を磨いていく
刀を作る工程の中で面白いのが「鍛錬」です。刀の原材料となる鉄を高温に熱し、伸ばしたり折り曲げたりを繰り返し、鍛えていきます。刀の形になる前なんですけど、鉄の質が 決まっていきますので、非常に重要な工程ですね。火の色や音や経験上の感覚等で、 頃合いを見計らって風の強弱を調整したりと、作業というよりは鉄とのコミュニケーションという感覚があるのですが、そこが面白いと思います。例えば、植物はただ伸びようとして伸びているのではなく、日光があたって明るいから、そっちを向いて伸びていくというのは自然の原理みたいなもの。私の取り扱う鉄にも同じような自然の原理があります。そういう原理をいかに繊細に読み取って、それを自分が現していけるかということを大切にしています。
鍛錬の工程は非常に繊細な感覚が必要です。こういった感覚は使うことで磨かれていくものだと考えますので、最初に刀鍛冶になろうと思ったきっかけにも関係しますが、自分がどういう人間になるかというところも個人的には重要だと思います。そういった意味でも、例えば鍛練を繰り返し行う中で自分の感覚も磨かれていくということが、この仕事の魅力というか面白さであると私は思っています。
理想の作品を追い求めて
魅力はありつつも、作者としての私の意図が感じられないような自然な作品を作りたいです。それは私自身が、原理を繊細に読み取って現わせるようになった時に自然に出来上がる作品だと思います。理想の作品を作ることに終わりはないと思います。到達点として目指しているものがあるのではなくて、ずっと自分を磨いていきたいですね。生きることも刀を作ることも修行だと思いますし、その道に終わりはないと思っています。
好みの人を見つけるような感覚で
若い人やいろいな人にもっと気軽に楽しんでもらいたいですね。博物館にはいろいろな作品が並んでいて一つ一つの出来栄えももちろんあると思いますが、私個人的には、作品を鑑賞するというより、人に会っているように感じることがあります。人の好き嫌いって、ただ単に何かの分野で優秀だからとか、優劣で決まるものではありませんよね?そうやって好きな作品を見つけていけば初めての人でも楽しめるのではないかと思っています。詳しいことが分からないということ などは気にせず、自分の感覚で気軽に楽しんで頂ければと思います。 その中で、作品の雰囲気を感じていただければうれしいですね。
日本刀の魅力を海外へ
海外にも刀剣はありますが、日本刀のように刀身に精緻な研磨を施して、その刀が本来もっているものを引き出して鑑賞するというのは、日本刀特有の文化なんです。海外の人も結構、日本刀の魅力に惹かれて愛好している方が多いので、事業として今後、海外にも展開していけたらと思っています。
事業所名 | 秀平鍛刀道場 |
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所在地 | 〒381-2351 長野県長野市信更町氷ノ田3110 http://hidehira-jpn.com/ |
代表者 | 根津 啓 |
事業内容 | 刀工 |
店舗外観 |