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株式会社西軽精機

上原 大輔代表

株式会社西軽精機は、佐久市小田井の工場でNC自動旋盤を使用して医療機器等の部品の旋盤加工・製造を行う会社です。社員を大切にする「しあわせ経営」を実践している代表の上原 大輔さんにお聞かせいただいた事業への想いや、夢をご紹介します。

製造工程を1人で担当し、難削材を加工することを得意としています

製造工程を1人で担当し、難削材を加工することを得意としています
製造工程を1人で担当し、難削材を加工することを得意としています

NC自動旋盤を使用し棒材から丸い製品を作っています。医療用機器部品の受注が多く、人工透析器や臨床検査装置、インプラントといった歯科用の機器の部品として使用されています。当社は、チタンやステンレスといった難削材を用いた多品種少量生産を得意としており、最近では宇宙航空関係で使われるインコネルといった材料に挑戦しています。
また、普通の工場では工程毎に分業することが多いですが、当社は全部1人で行います。図面を受け取って、プログラム、段取り、検査と1人で行います。そのことが強みにつながっていると考えています。分業している場合は、ボトルネックが発生しやすく短納期への対応が難しい面がありますが、1人で行うと待ち時間が少なくなり短納期に対応しやすいという面があります。
効率化を求めると分業の方が良いですが、1人でやると図面を見てプログラムを組んで加工していくので、2次元の図面が3次元の形になるという楽しさがあります。それがやり甲斐につながり難しい仕事でも前向きに考える社風にも繋がっていて助かっています。

先代からの事業引き継ぎ、会社の原点に気付かせてくれた本との出会い

先代からの事業引き継ぎ、会社の原点に気付かせてくれた本との出会い
先代からの事業引き継ぎ、会社の原点に気付かせてくれた本との出会い

父が創業者で私は2代目です。リーマンショックの頃に引き継ぎました。難削材を得意としていたことや、1人で全工程を行うことは先代の時から引き継いだ強みです。他には、工場では珍しい木の床も先代が導入しました。木の床は、底冷えしない、社員が疲れにくい、綺麗に見えるという特長があります。この頃から社員を大事にしたいという想いがあったのだと思います。ちなみに去年のことですが、この木の床の工場が有名バンドの目に留まり「アーティスト写真」の撮影場所にもなりました。

私自身は27歳くらいの頃に継ぐことを決めて戻ってきました。それまでは東京でバイク雑誌の編集の仕事をしていましたが、その仕事がかなりきつかったこともあり、少しは楽できるかな、という甘い考えもありました。
ところが、リーマンショックに見舞われて会社が潰れそうになり、これは本当にまずいと考えて必死に働いていました。仕事は大幅に減ったのですが、短納期の仕事はそれなりにありました。その短納期の仕事に対応するためには土日も休まず仕事する必要があったのですが、社員さんを出させる訳にはいかないので、ほとんど自分で対応して1年間くらい休みなしで働きました。その時に、社員さんの機械を借りて仕事をして月曜日に返すと、ちゃんと綺麗に掃除して返してくれと文句を言われるのです。自分が誰のために頑張っているのか伝わっていないことに不満を感じて、怒りっぽくなっていました。
そんな時、事務所で1冊の本に出会いました。坂本光司先生の「日本でいちばん大切にしたい会社」という本です。面白そうだと思って読み始めると、最初に「企業は何のために存在しているか」について書いてありました。私はすぐに、お客様のためだと考えました。お客様の要望に応えることで結果的に会社にも従業員にも利益があると信じていました。しかし、その本では「5人」のためにあると書いてありました。大事な順に「従業員とその家族」2番目が「取引先とその家族」3番目にようやく「お客さま」が出てきて4番目に「地域社会」5番目に「株主」と書かれており衝撃を受けました。読み進めていくと、世の中にはこんなにも良い会社があるのかと泣けてきました。中には伊那の大手食品製造業の会社も紹介されており、長野県として誇らしく思うとともに、当社も絶対に良い会社にしてみせると誓い、考え方がガラッと変わりました。

Well-being Company西軽精機 ~しあわせ経営~

Well-being Company西軽精機 ~しあわせ経営~
Well-being Company西軽精機 ~しあわせ経営~

変えていくために最初に行ったのは社員との約束です。朝礼で今まで自分の対応は酷かったと謝罪し、「これからは良い会社にする。だから、なにがあっても誰もクビにしない。」ということを約束しました。その2か月後くらいから売上が上がり利益も改善し始めました。今考えると、社員さんの心理的安全性が高まったのだと思います。この約束は坂本先生の「どんなことがあっても絶対に従業員をクビにしてはいけない。」という教えを取り入れたものですが、私はこれを魔法の言葉だと思っています。 また、当社は残業が多かったのですが、朝礼で残業がゼロになるような会社にしたいと言ったら、早速その日から早めに帰り始めました。「帰れるんかい!」と突っ込みたくなるような即効性は楽しい思い出です。
その他、有休消化率の向上にも取り組んできました。有休は従業員の権利なので100%取得するのが当然だと考え、目標を設定して取り組んできました。その結果、去年は消化率が98.8%まで向上しました。取得理由については聞かないようにしています。権利なのでどんな理由でも構いません。体調不良についてはフォローしたいので言って欲しいのですが、実際のところ当社では病欠は殆どありません。いつでも休めるので、体調不良で休むのは損ですよね。新型コロナが流行した時に、真っ先に罹ったのが私だったというくらい、みな健康的です。また、コロナ禍で仕事が減少した際に、仕事が終わったら早く帰って良いようにしました。以降も評判も良く業績も伸びていたので恒常的に続けています。

私がクビにしないという約束をしてから、7~8年くらい経ちますが離職率はゼロです。人は必ず成長し生産性はどんどん上がっていくので、今いる社員を大切にして絶対にやめさせないようにする方が、社員さんにとっても会社にとっても良いと思います。今は人手不足の時代なのでなおのことです。
企業理念は「自分と自分に関わる全ての人をしあわせにする」です。また、「Well-being Company西軽精機」と謳っています。ウェルビーイングはポストSDGsとして流行り始めている言葉ですが、直訳すると「良い状態」、他にも「健康」、「しあわせ」、「福祉」といった意味もあります。「しあわせ」という意味が一番しっくりくるので、しあわせ企業になるためにウェルビーイング経営を進めています。つまり「しあわせ経営」ということです。
「しあわせ」というのはハピネスという言葉もありますが、ハピネスはお金や地位などの瞬間的な「しあわせ」を表し、ウェルビーイングは持続的な「しあわせ」です。一番大切に考えている社員さんを「しあわせ(ウェルビーイング)」にする。「しあわせ」な人は生産性が1.3倍、創造性は3倍、離職率や欠勤率も低く、長寿にもなるという研究結果もあります。社員さんが「しあわせ」だと、生産性も上がり、改善が進みイノベーションが起こりやすくなる。結果として会社の成長にもつながります。

最高のスタッフ

最高のスタッフ
最高のスタッフ

先代である会長も口を出さないように決めているようで任せてくれていますし、兄も浜松の営業所でたくさんの仕事を受注してくれています。社員さんもみな積極的で、難しい仕事も断らないで前向きに取り組んでくれています。この10年を見ても図面の難易度はレベルが違うくらい非常に高くなっていますので、うちの社員は本当に優秀だと思います。ある時「当社の社員はプログラムから段取り、機械を動かして検査までできます。」という話をした時に、ある人から「それなら全員が工場長レベルだね。」と言われました。コロナの時もみんな頑張ってくれました。今は本当に最高のスタッフに囲まれています。
工場長レベルの社員なのであれば、他の会社で工場長待遇を受けられるレベルなのではないか、と現在の処遇に対して疑問を持ちました。それで、5年前から「年収1.5倍計画」を立てて、年収へ連動させる指針を作ってスタートさせました。初年度にかなり売上が伸び、その売上水準が今後も継続するのかという不安はありましたが、計画通りに給与を上げました。その後、コロナ禍の影響は受けましたが、順調に推移しており、今のところうまくいっています。
離職率ゼロが続いているので人手は足りているのですが、社員の紹介で来てもらった人は居ます。社員が自分の会社に誘ってくれるというのはとてもうれしいです。そのうち定年退職で人手が不足することも想定されますが、社員の子供が親の勧めで来てくれたりしたら、そんなにうれしいことは無いですね。

しあわせ経営で日本を元気に

しあわせ経営で日本を元気に

佐久産業支援センターでウェルビーイングワーキンググループのリーダーとして地元の企業向けに「しあわせ経営実践塾」を開催しています。講師の方を招いてしあわせ経営はどういうもので、どうなっていくのか等の講習を行っています。今後は実践発表もしていこうかと考えています。興味のある方はぜひ参加を検討してもらいたいです。また、当社を撮影場所として「実践!しあわせ経営」という紹介ドラマを作成しました。YouTubeで閲覧できるので、こちらも是非見てもらいたいです。ウェルビーイング経営を広める活動や取り組みも活発なので、佐久ではWell-being Companyが増え、元気になってきていると感じています。

日本は、過去30年間ずっと賃金が変わらず生産性も向上していないと言われています。1人当たりGDPもイタリアに抜かれました。これを解消するための答えがウェルビーイング経営、つまり「しあわせ経営」だと考えています。実際に当社でも1人当たりの付加価値額が1.3倍になっており研究結果通りの実績も出ています。
「しあわせ経営」を実践する会社が増えれば、その地域がしあわせになり、そういう地域が増えれば日本全体が絶対元気にしあわせになると思います。人を人として見て、その人を「しあわせ」にする、その人が「しあわせ」になれる環境を整えていくという「しあわせ経営」を広めていきたいです。

企業名 株式会社 西軽精機
所在地(工房) 〒385-0009
長野県佐久市小田井1077-18
HP http://www.nishikaru.co.jp
事業内容 NC複合自動旋盤による医療機器・産業用機器部品の製造
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