わら細工を継承する
私の会社が手掛ける代表的なわら細工は、日本相撲協会が開催する大相撲の本場所・巡業・各相撲部屋の土俵です。その名の通り俵に土を詰めたもので、本場所のテレビ中継でよく見られる土俵は、全てわらむで製作しています。その他にも神社のしめ縄や、お正月のしめ飾りを生産しています。また、わらの活用ということで、納豆に使われる藁苞(わらづと)やカツオのたたきの藁焼き用のわら、園芸用のわらなどわらに関するものは全て取り扱うわら専門の会社としてやっています。
わらむは技術の追求にこだわっています。日々練習に励み、良い製品を作ることに絶えず取り組みながら、新しい発想で今までにない創作わら細工を作っていくことにも挑戦してます。また、わらの確保にもこだわっています。高品質なわらを使うことで良い製品の製作にも繋がりますし、地域の農家さんの余ったわらを買い取ることで農家さんを支えることにも役立っていると感じています。
土つかずの負けない「勝藁」
高品質なわらを確保することを大切にしています。わらは生ものなので、ただ買って置いておくとカビてしまったり、蒸れてしまったりして、色合いが落ち見た目が悪くなります。そうならないために、設備投資にお金を惜しまずにきれいな状態でわらを保存できるように心がけています。
相撲用語で「土がつく」という表現がありますが、これは「負け」を意味します。わらも土がついた状態で保存しておくと縁起が悪いということで、真っすぐ立った倒れないわら、土つかずの負けないわらを意識しています。またそこから、わらにもすがって勝負に打ち勝つや、願いが叶うという意味を込めて「勝藁」(かちわら)というブランディングにも力を入れています。神事に用いることの多いわら細工ですので、品質には一切妥協することなく、神様に奉納できるように心がけています。
起業のきっかけは、自腹を切りたくなかった米俵マラソン
上伊那郡の中でも過疎化が進んでいる飯島町を町おこしで元気にしたいという想いがありました。飯島町は町名の通り「飯の島」と呼ばれており、お米が特産品です。そのお米を活用したイベントが開けないか考えを巡らせていた時、自分の趣味であったマラソンと掛け合わせて「飯島町米俵マラソン」を思いつきました。米俵を担いでマラソンをする・・・これはインパクトがあるぞと思い、すぐに企画をして新聞発表までしました。50人のマラソン参加定員も3日ですぐに埋まりイベント成功の兆しが見えてきた中、米俵を用意しなければならないため、地域の農家さんに米俵を作ってもらおうと相談を持ちかけました。そこで大きな思い違いをしていることに気づきました。農家は誰しも米俵を作れると思っていたのですが、そんなことはなく地域の農家さんで米俵を作れる人がほとんどいなかったのです。どうにかして米俵を用意しなければならないため、インターネット通販で調べていたところ、参加費を大きく上回る米俵費用が掛かることが発覚しました。このままでは何十万円も自腹を切らなければならなかったため、自分で作ればタダで米俵を用意できるのでは?と思い、米俵を作り始めたのがわら細工を始めるきっかけでした。
たまたま飯島町に米俵を作れるわら細工の名人がいることを知り、その先生に弟子入りするという形で米俵作りがスタートしました。わら細工を始めてみると、元々サラリーマンとして肉屋で包丁を握っていた職人でもあったため、新しい技術を覚えていくのに面白みを感じました。また、わら細工業界のことも勉強していく中で、わら細工職人の高齢化や後継者不足を知り、伝統文化が自分の代で絶えてしまう可能性がある中、わら細工を辞めるということができませんでした。安定したサラリーマンを辞めて、使命と責任感のみで会社を興したので、背水の陣という想いでひたすらわら細工の練習をして、今に至っています。その成果もあり、米俵マラソンは現在も続く毎年の恒例イベントとして、大変好評いただいております。
職人70人を要するわらむのスタイル
わら細工は、ストレスを抱えたまま作ると製品の形にものすごく影響します。リラックスした環境で作ることが良い製品に繋がるため、職人には各々好きな場所、好きな時間でわら細工を製作してもらっています。ガンガン作りたい人は沢山の製品を作ってもらい、休みたい人は休んでもらうような働き方としています。
職人にはわら細工を作ることに専念してもらうため、わら細工の技術継承とわらの潤沢な在庫確保を徹底しています。やる気がある職人にはどんどん技術を教え色々な製品を作ってもらい、そのためのわらの提供は惜しみません。わらがないと練習すらまともにできないので、高品質なわらを潤沢に確保することで職人がわらの心配をすることなく作業できるように心がけています。
日本の伝統文化を世界に発信
今後の夢は、日本の伝統文化を世界に発信していくことです。当社もインバウンド関連として、外国人観光客にわら細工を体験してもらい近くの神社に奉納するといった取り組みを行っており、非常に好評をいただいております。日本市場よりはるかに大きい海外市場への参入に向けて、海外販路の開拓を一つの目標にしています。今年はイタリアとフランスの展示会に参加して、どのくらいの反響があるかを探っていきたいと思っています。
また、このわら細工を地域の産業にしていきたいと思っています。しめ飾りやしめ縄の市場規模は、一説には500億円産業と言われており、その内の2割に当たる100億円の産業をこの伊那谷に作りたいと思っています。わら細工に必要なわらは、伊那谷の余った田んぼを活用することにより、農家さんを支え、耕作放棄地を減らしていくことにも繋がります。このわら細工には、作り手が一人で作業ができるという特徴があります。病気などの問題で長時間働けない方や人と接することが苦手な方など、色々な事情で仕事ができていない方がいると聞いています。そういった方でも、わら細工は一人で好きな時間に好きな場所で作業ができるため、どんな方でも活躍できる可能性があります。稲わら一本に付加価値をつけることによって、地域の経済を循環させるという仕組みを作り、この伊那谷の一大産業にすることを目指しています。
企業名 | 株式会社 わらむ |
---|---|
所在地(本社/工場) | 〒399-3702 長野県上伊那郡飯島町飯島1482-3 |
所在地(営業事務所) | 〒399-3705 長野県上伊那郡飯島町七久保1833-5 |
HP | https://waramu.jp |
オンラインストア | https://kachiwara.com |
事業内容 | わら細工の製作・販売 |
外観 | |
放送動画 |