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合資会社宮島酒店

宮島 敏蔵元

合資会社宮島酒店は、伊那市で明治44年に創業した、日本酒「信濃錦」を手掛ける造り酒屋です。蔵元の宮島敏さんは、あえてお米を磨かず、お米の持つ味わいを美味しく表現する酒造りを大切にしています。
信州の伊那谷に根差した土着の蔵元としての酒造り、環境への想いや夢をご紹介します。

信濃錦の味わい

信濃錦の味わい
信濃錦の味わい

信濃錦はお米そのものを感じられるお酒です。中にはご飯を食べているような感覚だと言うお客さまもいます。お酒単独で飲むというよりは、食事と合わせて飲んでいただくことを前提として、穀物の持つ味の広がりを活かし、世界の色々な食事に合わせようという狙いがあります。酒造りに使用するお米にこだわることはもちろん、お米をあえて磨かずにお米の持つ旨味を引き出すことで、お米の穀物としての味の広がりを表現しています。

安心安全な酒造り

安心安全な酒造り
安心安全な酒造り

先代である父は、「安心安全な酒造り」を志す中で、お米だけの酒造りを目指してきました。私も父の想いを受け継ぎ、私なりに「安心安全な酒造り」について考え続けてきました。それは、使用するお米にこだわり、そのお米をどう活かしきるかということです。30年程前から契約栽培を始め、全てこの伊那谷で栽培された顔の見える素材にこだわっており、農薬をできるだけ使わない、あるいは全く使わない方法で栽培いただいています。
また、お米を大事に活かしきるということで、商品の大半は表面の9%のみを磨いた91%精米を採用しています。これは、普段私たちが食べるお米と同じ程度の磨き具合です。元々は、お米を40%程度まで磨いた純米大吟醸酒を造りたいと思い農家さんにお話ししたところ、そんな「もったいない」ことをせず、もっとお米を大切に扱ってほしいと言われたことがありました。それをきっかけとして、お米を極力磨かない酒造りをしようと奮起し、お米を2割磨く80%精米で酒造りをしていた時期が続きましたが、お酒の姿がなかなか定まらず悩み続けていました。そんな中、ある年にある品種の米が少ししか採れないことがあり、思い切って飯米用の精米機で91%精米として酒造りをしてみたところ、とても米の旨味が広がり、個性がはっきりとしたお酒が出来上がりました。磨かないお米は溶けにくいので、仕込み難いという側面がありますが、美味しい味わいが出るように工夫を重ね、最近では信濃錦ならではの酒造りとして確立しつつあります。

環境への取り組み

環境への取り組み
環境への取り組み

私が環境を意識したきっかけは、安心安全を標榜して酒造りをしてきた父の教えでした。父の教えを深掘りすると、農家の方の顔が見える安心安全なお米で酒造りをするという考えに辿り着き、平成3年より契約栽培を始めました。
また、安心安全なお米は、環境にやさしいお米であると考え、農薬をできるだけ使わない、あるいは全く使わない米作りを、地元の農家さんと相談しながら進め、平成17年には全ての酒造米が契約栽培米となりました。このことは、地域の環境保全、ひいては田圃から海への水資源の保全にも繋がると思っています。
その他には、酒粕や瓶のラベルにも、環境を意識して工夫をしています。91%精米で出た酒粕は、食べるには苦味があり、色合いも茶色いため、酒粕そのままでは市場性がないものとなっていますが、こういったものもただ捨てるのではなく、田んぼに戻して肥料として活用しています。また瓶のラベルについても、大きなラベルを瓶の胴部分に貼ってしまうと、空き瓶を回収して再利用する際、機械での洗浄時に剥がれ難く、その分洗浄用の水を沢山使うことや、余計な電力を使うことに繋がります。そういった面からも、剥がしやすく環境にやさしい、瓶の肩の位置にのみラベルを貼るというスタイルを積極的に採用しています。

地球人が造った地球人のための酒でありたい

地球人が造った地球人のための酒でありたい

ジューシーで華やかな吟醸酒こそが日本酒だ、という時代が長らく続いており、もちろん今現在も人気があります。吟醸酒とは精米歩合が低い、すなわちお米をよく磨いたお酒であり、お米を極力磨かない信濃錦とはアプローチが真逆なもののため、余り精米しない純米酒は中々受け入れられないことが多かったと思います。
ですがここ数年、日本酒が海外でもよく飲まれるようになり、国際酒として変わりつつあります。
肉料理には渋みや苦みがある赤ワインが良く合うといわれているように、穀物の持つ五味(甘・酸・辛・苦・渋)を美味しく表現した日本酒は、世界の色々な食事と合わせやすいことが認知・評価されつつあります。
実際に精米歩合91%の純米酒を海外に輸出しており、手ごたえを感じています。日本酒が世界に羽ばたくためには、「あえて磨かない」という考え方も実は必要だと思っています。
お米を大事に使うと、こんなにも美味しいものが出来るんだという「あえて磨かない」日本酒の面白さを日本のみならず海外にも伝えていき、地球人が造った地球人のための酒になれたらというのが、私の夢です。
そのためには、次の世代にこの地球を残していけるように努力していかなければなくてはならず、環境への取り組みをこれからもより一層進めていき、持続可能な社会に向けての酒造りを実践していきたいと考えています。

会社名 合資会社宮島酒店
所在地 長野県伊那市荒井3629番地1
TEL 0265-78-3008
事業内容 日本酒製造・卸
外観
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