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いまのま

上野 ひと美店主

長野市若穂の「いまのま」は、食を軸にいろいろな方の“居間”になるような場をつくりたいという思いで営業している食堂です。お子さん連れのお母さんでも、気軽に寄ってもらえる雰囲気の店内で、安心して食べられるやさしい食事を提供しています。店主の上野 ひと美さんにお聞かせいただいた事業への想いや夢をご紹介します。

野菜本来のうまみや甘みを引き出す優しい味付け

野菜本来のうまみや甘みを引き出す優しい味付け
野菜本来のうまみや甘みを引き出す優しい味付け

当店は、小さなお子さんと一緒にゆっくりできて、ご年配の方も気軽に集える〝食堂〞です。ランチメニューはご飯に味噌汁、主菜に小鉢が6品付いた「小鉢御膳」、自家製ベーグルに主菜・サラダ等が付いた「自家製パンプレートランチ」、カレー、ハンバーグなどワンプレートでご提供する「ひと皿ご飯」です。父の畑で作られた野菜をたくさん使っていて、しっかり食べても胃もたれしない、そんな内容になっています。
おかずの材料はほぼ自家製で、既製品は使用しません。重ね煮という調理法で、油や砂糖をあまり使わず、野菜本来の甘みやうまみを引き出し、最後に少し調味料を足して味を調える程度のやさしい味付けになっています。味付けには自家製の醤油麹や塩麹などを使用し、風味づけにごま油等を使っています。
ベーグルは、お店を作りたいと思った時からずっとメニューにしたくて、自分で粉の配合を研究して、自分好みのベーグルを作ってきました。特徴は外がパリッとして、中はむぎゅうふわっとした感じです。あんバターのベーグルサンドは、あんこも自家製です。きび砂糖を使い、やさしい甘さで、あずきの食感を少し残したものになっています。
お客様には、ベーグルを気に入っていただいて、テイクアウトされる方もいらっしゃいます。普段はプレーンしか焼いていないのですが、時々ベーグル祭りとうたって、いろいろな種類を焼いて、販売する時もあります。
主人の本職は建築設計士なのですが、営業日で忙しい時間帯は配膳やドリンク担当としてフロアを手伝ってくれています。とても評判が良いです。

幅広い年代層が気楽に来られる、みんなの「居間」に

幅広い年代層が気楽に来られる、みんなの「居間」に
幅広い年代層が気楽に来られる、みんなの「居間」に

「いまのま」は、リビングの「居間」と「土間」を合わせた造語です。薪ストーブのある「土間」と靴を脱いで上がる「小上り」があります。年齢層関係なくみんなが集って、お話が出来る場所をイメージして、「みんなの居間」という意味で名付けました。
私は以前、料理教室の講師をしていたのですが、その時に小さなお子さんがいるお母さんに「料理教室に来たいけれど、子供をどこかに預けなければいけないので、なかなかそれは出来ない。」という話を聞いていました。そのような経験からお子さま連れでも、ゆっくり過ごせる場所を作りたい、と思って、このような場所を作りました。
建物は、小さなお子さんがいても気兼ねなく、ゆっくりすごせる空間というのがコンセプトで、低い椅子、低いテーブル、そして赤ちゃんがハイハイしても安心な柔らかな手触りの床、木の温もりを感じられるように、ということを設計士である主人にお願いしました。地元産、長野のものを使いたかったので、長野県産の唐松の床材や、土間には松代柴石を使っています。小さいお子さんがいても安心なように、客席には極力何も置かないようにしています。幼いお子さまからご年配の方にも優しい、すごく居心地の良い理想的な空間になっていると思います。
特にロードサイド看板などは出さず、植栽や魅力的な景観で「あの建物はなんだろう?」とちょっと気になって「入ってみよう!」と人を惹きつける様な外観を考えました。隣に神社があるので、その景観とも調和するように、外壁は手焼きの焼杉です。焼杉は、表面を炭化させて、防虫防腐効果と耐久性を高めた外壁材で、炭化層の凹凸や鈍い光沢が独特の表情を生み出します。
最初は小さなお子さんがいるお母さんをターゲットに、と思っていたのですが、もっと幅広い年代の人がお店に来てくださいます。ご相席していただく長テーブルもあるので、赤ちゃんがハイハイしているのを、みんなが微笑ましく眺めている姿を厨房から見ていると、すごくうれしい気持ちになります。知らない人同士でも最終的には仲良くなって帰って行かれることもあります。

レンタルスペースでチャレンジショップを

レンタルスペースでチャレンジショップを
レンタルスペースでチャレンジショップを

定休日には、レンタルスペース「みなのま」として、客席や厨房の貸し出しをしています。間借りカフェとして、他の方がここでカフェ営業をされている日もあります。私の周りには、お料理が好きで、いつかは自分のカフェをやりたいと思ってはいるものの、自分のお店を持つには、費用もかかるし、色々な面で大変だ、と諦める方がたくさんいます。私はたまたまお店を開くことが出来たので、それなら休みの日にそういう方に貸し出して、チャレンジショップのような形で経験してもらったり、料理教室の場として活用してもらったりできるようにレンタルスペースを考えました。厨房は使わなくても、客席を利用してクラフトのワークショップやセミナーなどの場として利用されている方もいます。
オープンは2024年の1月で、もうじき1年になります。お客様の温かさに支えられて、当初考えていたより、皆さんに愛されているお店になって来ているのかなと思います。みなさんがここで楽しそうに笑っておしゃべりしている姿を見たり「美味しかったよ、また来るね。」という言葉をいただくだけで、やってよかったと実感しています。

昔からの住人と移住してきた住人、お年寄りと若者などの交流の場、伝統を伝える場に

昔からの住人と移住してきた住人、お年寄りと若者などの交流の場、伝統を伝える場に
昔からの住人と移住してきた住人、お年寄りと若者などの交流の場、伝統を伝える場に

これからの夢は、開業後1年で、まだまだ地元の方に知られていないので、もっと地元の方に来ていただいて、その方々同士の交流の場を作りたい、と思っています。ただ食事だけでなく、色々なことができる皆さんの「居間」になれるようなお店にしたいです。
若穂地域には、みんなが集まれる場所があまりありません。この地域は新しい住宅も増え、引っ越してくる方も多いですが、一方で昔から住んでいる方もいて、双方の交流がなかったので、そういう方たちの交流の場所にもなれたらいいなと思っています。
私が以前に住んでいた地域は、子供たちもお正月はみんなで餅つきをしたり、そういう子供の行事もたくさんあったのですが、こちらに来て我が子が小学校に入ってみると、ちょうどコロナということもあって、地域や学校の行事がなくなってしまい、子供同士・親同士も交流がなかったり、今まで住んでいた方とのかかわりもなかったりします。ですから、しめ縄を作ったり、やしょうまやおやきを作ったり、昔からのその時期の伝統行事を年配の方が若い人たちに教えて伝えていける、そんなワークショップをやりたいです。

店舗名 いまのま
所在地 長野市若穂綿内8029-17
TEL 026-214-7503
事業内容 飲食店・レンタルスペース
外観
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